こんなに早く人生の転機がくると思わなかった。マチノ25年目は早くも波乱の予感だ。てか考えてみたら去年もそうだった
父のこと
父は、小さな建設会社で、現場監督をしている。
社長(父の叔父)、経理を社長の奥さん(マチノ山紫米もお世話になってる父の叔母)、専務が父。そして大工さんが数人。専務という肩書きではあるが、営業、見積もり、設計、現場監督そして自分も大工として動く。社長が80歳目前で高齢のため、「おれが倒れたらこの会社終わっちまうな」とよく冗談で言っていた。
このビジネスモデルは中小建設会社ではよくあることだそうだ。だからめずらしいはなしではない。
建設業というものは、一つの会社ではことは済まないらしい。その傾向がほかの業界よりも顕著だ。建物を作るのには、大工さん、水道屋さん、電気屋さん、クロス屋さん左官屋さんウンタラカンタラなんだりかんだり、たくさんのほかの職人さんと一緒に仕事をする。それをまとめる現場監督は絶対不可欠だそうだ。つまり現場監督=父がいないと、仕事が進まない。父が言っていたことは冗談でもないのだ。
ある時聞いたことがある。
「設計図書くんだからそれ通りに作ったらいいじゃん」
「そんじゃダメ、図面なんて何十分の一で作ってんだから、それを拡大したら必ず誤差が出る。それに角の処理はどうするだの、やってみたら壁紙が剥がれてくっから補強はどうするだの、絶対に起こる。職人らは輩だから喧嘩するし近所の人に気は使えねーし…」
「ほほん…」
跡継ぎ問題なんて無縁だと思ってた
それに、この会社には後継がいない。
「おめーらが婿養子でも連れてきたらな〜」
「🐘はがんばってるからだめだよ、🍟か🍅にしたら。どっかの現場でスカウトでもすれば」
あれ、長女だし私が継げば解決…?と一瞬、ほんの一瞬思ったけど、すぐそれは現実的ではないなと考え直した。
だって私、男に怒られるのが心底苦手なのだ。一人前になるにはまず大工ができなくちゃいけないから、修行期間は怒られることが目に見えてる。現場監督になったとして、自分より何まわりも上の人にピーチクパーチク指図しなきゃいけない。さらに苦しいことには、この田舎で、女のいうことなんか聞けねえなんて言う人が本当に存在するこの町で仕事をしなくちゃいけないことだ。ほら無理。そら無理。いやだ。1人で戦えない。
一瞬で終わったけどマチノでも跡継ぎ問題に巻き込まれた。1人で悩んで終わっておもろかった。
つづく