「ばあちゃんがほとんどご飯を食べられてない。だから今のうちにあっておいた方がいい。」
じいちゃんと親戚大勢で会いに行った。
職場で何人もこういう人を見ている。喋れないし、動けない。見えてるかわからない。でも人間は死ぬその間際まで、聞こえているらしい。
この間お盆に会った時にはもうすでにそう言う状態だった。あまり食べれていないときいた。喋れなくなってしまったんだと悲しいながら覚悟を決めた。目が開いているだけで嬉しかった。
今日も、目はしっかり開いていた。目が合わずどこかを見ていたのだけど、次第に目が合うようになっていった。
仕事のくせでつい大声で「ばあちゃん、町のだよ。ばあちゃん、ごはんたべた?」と聞いた。
すると「まあだ」と返ってきた。
喋れないものだと思い込んでいたから、ほとんど奇跡の出来事だった。涙が溢れてきた。親戚もみんな「よかった、町のはさすが介護士さんだね」と喜んでくれて二重で嬉しかった。
初めて、この仕事が家族の役に立った。やってよかったと思った。
あれから2週間、まだ危篤の知らせはこない。年越ししようね、ばあちゃん。